記述式試験の対策として、どのように勉強すればいいのか、どれだけ勉強すればいいのかと皆さん悩まれると思います。
私の経験から、筆記試験のうち、まず選択科目対策を8つのステップに分けて整理しました。
各ステップを確実にこなせば、合格できる論文の書き方が身につくと考えています。
※なお、平成31年度から、設問Ⅰが択一式から記述式に変更となります。
このため、現段階では、従来、記述式により出題されていた設問Ⅱ・Ⅲを対象にまとめています。
今後、設問Ⅰの対策も加筆する予定です。
1) 自分が受けようとしている試験についてどれくらい知っていますか?
私が、一級建築士試験・技術士試験を受験・合格した経験からこれらの国家試験に合格するために必要だと学んだのは以下の2点です。
・どのような回答が評価され合格できるのか、採点基準・評価方法を理解する。
・過去問題から具体的にどのような問題が出題されているか傾向を把握する。
つまり、「自分が受ける試験」についてよく知ることが大切です。
しかし、一級建築士なら製図試験、技術士試験であれば記述式のように、正解が一つではない試験の場合、過去問題は過去のものとして軽視する人が多い印象があります。
技術士試験の中でも最も勉強が必要となる2次・選択科目については、試験の概要・過去の出題傾向等を把握することから始めましょう。
2)「技術士に求められる資質能力」を有している人を見分ける試験
先ほど、「自分が受ける試験についてよく知ることが大切!」と書きました。
同様に、そもそも、私たちが目指している「技術士に求められる資質・能力」を知っていますか?
日本技術士会HPに掲載の資料に「技術士に求められる資質能力(コンピテシー)」について、以下のように記載されています。
(出典:平成31年度技術士試験の概要について(PDFファイル 286KB)
専門的学識
・技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な、技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用すること。
・技術士の業務に必要な、我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識 を理解し応用すること。
問題解決
・業務遂行上直面する複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、調査し、これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。
・複合的な問題に関して、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済 性等)、それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理的に提案し、又は改善すること。
マネジメント
・業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において、品質、コスト、納期及び生産性 とリスク対応に関する要求事項、又は成果物(製品、システム、施設、プロジェクト、サー ビス等)に係る要求事項の特性(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)を満 たすことを目的として、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。
評価
・業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。
コミュニケーション
・業務履行上、口頭や文書等の方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザー等多様な関係者との間で、明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
・海外における業務に携わる際は、一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え、現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。
リーダーシップ
・業務遂行にあたり、明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者の利害等を調整し取り まとめることに努めること。
・海外における業務に携わる際は、多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに、プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること。
技術者倫理
・業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、文化及び環 境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代にわたる社会の持続性の確保に努め、 技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。
・業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
・業務履行上行う決定に際して、自らの業務及び責任の範囲を明確にし、これらの責任を負う こと。
継続研さん
・業務履行上必要な知見を深め、技術を修得し資質向上を図るように、十分な継続研さん (CPD)を行うこと。
技術士2次試験に合格する人は、上記の資質能力を有していると判定された人となります。
3)ステップ1:採点のポイントを把握する
次に、2次・選択科目ではどのようなポイントをみて、合否を判定しているかを把握しましょう。
筆記試験の構成のところで、平成31年度からの筆記試験の変更点をまとめました。
平成31年度以降の筆記試験の構成は以下のようになっています。
表:第二次試験の試験内容(選択科目)
試験
科目 |
改正後(平成 31 年度~) | |||
問題の種類 | 試験
方法 |
試験
時間 |
配点 | |
選択 科目 | 「選択科目」 に関する専門 知識及び応用能力 | 記述式
600 字詰 用紙 3 枚以内 |
3 時間 30 分 | 60点
(30点)
(30点) |
「選択科目」 に関する問題 解決能力及び 課題遂行能力 | 記述式
600 字詰 用紙 3 枚以内 |
日本技術士会のHP掲載資料(平成31年度 技術士試験の概要について)の中で、選択科目について以下のように示されています。
1「選択科目」についての専門知識に関するもの(設問Ⅱ-1で出題)
概念 | 「選択科目」における専門の技術分野の業務に必要で幅広く適用される原理等 に関わる汎用的な専門知識 |
出題内容 | 「選択科目」における重要なキーワードや 新技術等に対する専門的知識を問う |
評価項目 | 技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち,専門的学識,コミュ ニケーションの各項目 |
2.「選択科目」についての応用能力に関するもの(設問Ⅱ-2で出題)
概念 | これまでに習得した知識や経験に基づき,与えられた条件に合わせて,問題や 課題を正しく認識し,必要な分析を行い,業務遂行手順や業務上留意すべき点, 工夫を要する点等について説明できる能力 |
出題内容 | 「選択科目」に関係する業務に関し,与えられた条件に合わせて,専門知識や 実務経験に基づいて業務遂行手順が説明でき,業務上で留意すべき点や工夫を 要する点等についての認識があるかどうかを問う。 |
評価項目 | 技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち,専門的学識,マネジメント,コミュニケーション,リーダーシップの各項目 |
3.「選択科目」についての問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの(設問Ⅲで出題)
概念 | 社会的なニーズや技術の進歩に伴い,社会や技術における様々な状況から,複合 的な問題や課題を把握し,社会的利益や技術的優位性などの多様な視点からの調 査・分析を経て,問題解決のための課題とその遂行について論理的かつ合理的に説明できる能力 |
出題内容 | 社会的なニーズや技術の進歩に伴う様々な状況において生じているエンジニ アリング問題を対象として,「選択科目」に関わる観点から課題の抽出を行い, 多様な視点からの分析によって問題解決のための手法を提示して,その遂行方策について提示できるかを問う。 |
評価項目 | 技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち,専門的学識,問題解決,評価,コミュニケーションの各項目 |
(出典:平成31年度技術士試験の概要について(PDFファイル 286KB)
具体的に、どのような問題として出題されるかは、次のステップの過去問題の分析で確認していきます。
まずは、このステップでは、それぞれの問題で何を評価されているかを確認しておいてください。
筆記試験における論文は、「技術士にふさわしい資質」を有していることを採点官にアピールする場です。アピールする方向性がずれていると、評価してもらえません。
回答案を考える際に、何を書けばいいのかと悩んだ時は、この表にまとめられた各問題の「概念・出題内容・評価項目」再度確認して、何を評価しようとしている試験なのかの基本に戻って考えてみてください。