それでは、二次試験で一番勉強が大変な設問Ⅲ対策に入っていきたいと思います。
1)過去問題を1つ選んで、合格できる論文のレベルを掴む!
ステップ3同様に、設問Ⅲについても、過去問題6年分をみて、自身が本番で選ぶであろう問題とジャンルを絞り込みましょう。
私の場合は、網掛けの問題を選だろうと思います。(都市及び地方計画をサンプルに説明していますが、みなさん自身が受験する科目で同様に整理してください。)
【設問Ⅲ】
この中で、(できれば直近の)過去問題から1つ選び、この問題に対して、回答案の作成を行っていきます。
ここで、習得したいのは、「合格できる論文の書き方」です。
・どういった論文の構成が望ましいか
・合格できる論文のレベル
この2点を、過去問題をサンプルにして、1つの論文を何度も見直し、熟度をあげてください。
では、具体的に、合格できる論文の書き方について勉強していきましょう。
2)合格論文を書くための2つの要素
合格できる論文に必要な要素は、
・論理的な流れ
・多様な切り口・視点
この2つが必要になります。この2つは、いわば自転車の両輪となります。
「あれ?論文を書く文章力は必要ないのか?」
と思われるかもしれませんが、「文章力」は、自転車で言うと、補助輪です。
もちろん、文章力があるに越したことはないですが、小説を書いて賞をねらっているわけではありません。読み手を感動させる必要もありません。
日ごろの業務で、業務報告書や製品説明書、実験レポートを書いている人は、試験でも同様に書ければ大丈夫です。
文章力よりも、合格するために必要なのは、「論理的な流れ」「多様な切り口・視点」この2つの要素を持った論文となります。
まず、ステップ4では、論文の「論理的な流れ」について勉強しましょう。
3)論理的な流れとは
「ロジカル・シンキング」や「ロジカル・ライティング」に関して書籍などを読まれたことはあるでしょうか。
私は、実務のために、「ロジカル・ライティング」の習得に励みました。
「論理的に考えたり」「論理的に話したり」「論理的に文章を書いたり」することが苦手な方は、この試験は、やや苦労することになるかと思います。
しかし、あまり難しく考える必要はありません。
普段、無意識に考え、選択していることを、「現状」「課題」「対処法」と分けるようにすれば、それが論理的な考え方となります。
よく使われる例えがあります。それは、
・空を見たら曇っていた
・雨が降りそうだなと感じた
・傘を持ってでよう
日常、よくある場面かと思いますが、
・空が曇っている=現状
・雨が降りそうだな=現状から判断した問題、現状から想像したこと
・傘を持ってでよう=空・雨に対して、対処した方法
というように、無意識に現状から、今後起こりうる問題を予測し、対策を立てるというのは誰もが行っていることです。
「論理的な流れ」というのは、
現状に対して、課題をみつけ、このような対策をたてるという思考の流れを見せることでもあります。
この際に、注意しなければいけないのが、設問の流れに沿うことです。
4)設問に沿った論理の流れを骨子にまとめる
私は、平成26年度に受験しています。試験に向けて、平成25年度の設問Ⅲ-1で論文対策をまず勉強しましたので、この問題を例に説明したいと思います。
平成25年度 建設部門 都市及び地方計画
設問Ⅲ-1 東南海・南海地震など,全国で大きな地震の発生が想定されているが,中央防災会議においては,地震・津波に強いまちづくりの方向性が打ち出され,津波防災地域づくりに関する法律も制定されている。これらを踏まえて,都市部において,津波による被害に関するまちづくり上の対応策を検討するに当たり,必要な海岸保全施設等が整備されることを前提に,都市及び地方計画の技術士として以下の問いに答えよ。 |
この設問が求めている論理構成は以下のようになっています。
まず、設問の問題文が示す社会的背景と前提条件は以下のようになっています。
問題文の社会的背景 | 問題文の前提条件 |
・大きな地震の発生が想定
・津波防災地域づくりに関する法律が制定 |
・都市部において、津波による被害に関するまちづくり上の対応策を検討
※必要な海岸保全施設等が整備されることを前提 |
このことを踏まえ、「都市及び地方計画の技術士として」以下の論理構成に基づく回答を示さなければなりません。
(1) 課題(多面的な視点から)
※津波に強い都市とするために検討しなければならない課題 |
(2)総合的な解決策 | (3) 解決策を実現する際の問題点 | (3) 対応の考え方 |
問題文は、(1)~(3)の3段構成になっていますが、回答の論理構成は上記のように4段構成で回答する必要があります。
では、合格論文に必要な要素の一つ「論理的な流れ」とは、どのようなことかと言うと、
あまり難しい話ではなく、設問に流れに沿って、それぞれの論理が展開されていることになります。
この問題の場合だと、(1)課題で多面的な視点から述べよといわれていますので、少なくとも2つは、課題をあげると思います。
この課題に対して、(2)解決策、(3)問題点、(4)対応の考え方を述べるというのが、論理的な流れになります。
この問題に対して、私が作成した回答の構成(骨子)を例に示します。
上記に示すように、私は、設問で「多面的な視点から」と指定されていたので、私は3つの課題を提示しました。
回答の論理的な構成としては、3つの課題それぞれについて解決策・問題点・対応の考え方となるようにしています。
また、(2)総合的な解決策と書かれていましたので、(2)の解決策の大きな方向性として、「ハード・ソフトの組み合わせによる多重防衛」の考え方を示すこととしました。
なお、「おわりに:PDCAサイクル、スパイラルアップ」については、もし、回答用紙に余裕があるようなら、最後の結びに書くようにしていたものです。
5) なぜ、論理的な構成力を重視するか
先ほど述べたように、3つの課題をあげたら、それぞれに対して、解決策、問題点、対応の考え方と対になるような構成とするようにお伝えしましたが、その理由を説明します。
改めて、設問Ⅲの出題の概要を確認してみましょう。
「選択科目」についての問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの(設問Ⅲで出題)
概念 | 社会的なニーズや技術の進歩に伴い,社会や技術における様々な状況から,複合的な問題や課題を把握し,社会的利益や技術的優位性などの多様な視点からの調査・分析を経て,問題解決のための課題とその遂行について論理的かつ合理的に説明できる能力 |
出題内容 | 社会的なニーズや技術の進歩に伴う様々な状況において生じているエンジニアリング問題を対象として,「選択科目」に関わる観点から課題の抽出を行い,多様な視点からの分析によって問題解決のための手法を提示して,その遂行方策について提示できるかを問う。 |
評価項目 | 技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち,専門的学識,問題解決,評価,コミュニケーションの各項目 |
出典:平成31年度技術士試験の概要について(PDFファイル 286KB)
設問Ⅲについては、「問題解決能力」と「課題遂行能力」を問うものとしています。
その際に、上表の概念にあるように、「論理的かつ合理的に説明できる能力」と書かれています。
この論理的かつ合理的に説明を行うには、回答論文の中であなたが提案した「課題の解決策」や「対応の考え方」が思いつきや、偏った視点によるものではないということを相手に評価してもらわないといけません。
かつ、設問Ⅲは、試験時間がおおよそ2時間程度となっています。
(平成31年度からは、設問ⅡとⅢあわせて、3時間半)
この2時間の中で、論理的かつ合理的にあなたの考えを説明するには、対になった論理的な流れにより回答論文をまとめることが有効であるからです。
ひとまず、ステップ4のまとめとして以下のことを理解してもらえたらと思います。
・回答案の骨子を設問の構成にそって、表にまとめる
・骨子を表にまとめた時に、はじめに提示した課題ごとに論理が展開され、表の横の流れで論理が完結できていること
次のステップ5では、合格論文に必要なもう一つの要素、「多様な切り口・視点」について説明したいと思います。