ステップ4では、「論理的な流れ」に基づく回答案をつくる方法をお伝えしました。
ステップ5では、合格論文に必要なもう一つの要素「多様な切り口・視点」について説明します。
1)なぜ、多様な切り口・視点が必要か
まず、「多様な切り口・視点」が必要な理由を説明します。
先ほどのステップ4で確認した設問Ⅲの出題の意図を確認してみましょう。
「選択科目」についての問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの(設問Ⅲで出題)
概念 | 社会的なニーズや技術の進歩に伴い,社会や技術における様々な状況から,複合的な問題や課題を把握し,社会的利益や技術的優位性などの多様な視点からの調査・分析を経て,問題解決のための課題とその遂行について論理的かつ合理的に説明できる能力 |
出題内容 | 社会的なニーズや技術の進歩に伴う様々な状況において生じているエンジニアリング問題を対象として,「選択科目」に関わる観点から課題の抽出を行い,多様な視点からの分析によって問題解決のための手法を提示して,その遂行方策について提示できるかを問う。 |
評価項目 | 技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち,専門的学識,問題解決,評価,コミュニケーションの各項目 |
出典:平成31年度技術士試験の概要について(PDFファイル 286KB)
この中で、設問Ⅲの概念で「複合的な問題や課題」「多様な視点からの調査・分析」を経てと言われています。
また、設問によっては、今回、私が回答案を示した平成25年度の設問Ⅲ-1のように、問題分に「多面的な視点から」と指定されていることもあります。
これは、通常の業務において、工法選定の際に、工期・事業費、また、周辺環境への影響など総合的に比較・検証して最適案を決定するのと同じことです。
メリットだけをみずに、メリット・デメリットの両面を適切に分析し、問題を解決する能力、および現実的にそれを実現できる能力(課題遂行能力)を示す必要がある試験だからです。
これらのことから、仮に問題文に「多面的な視点から」「2つの課題を挙げ」など指定されていなくとも、複数の視点から論理展開できる論文が望ましいと言えます。
2)定番の切り口を持っておこう
しかし、「肝心の各項目のネタが出てこない」、「何を書けばよいのかわからない」。と、手が止まってしまう方が多いのではないでしょうか。
そのような場合は、ビジネスに必要な要素として挙げられる「ヒト モノ カネ」の切り口で考えるとよいです。
さらに、これに「時間」の切り口を加えてもよいと思います。
具体的には以下のようなことが考えられます。
【ヒト】
・人材不足、後継者不足(ベテラン職人の減少による質の低下など)
・関係者(地権者・事業者)などの合意形成が困難なことが予想される
【モノ】
・資源不足
【カネ】
・予算・財源が足りない
・莫大な事業費がかかり、実現性に欠ける
【時間】
・実現に多大な時間がかかる
特に、負の側面などを考える時は、「ヒト/モノ/カネ/時間」に、何か問題点などが思いつかないでしょうか。
設問Ⅲについては、そもそも技術的な面で簡単に「こうすれば解決!」と言えるような状況は出題されません。
この4つの切り口で考えれば、必ず障害となる問題が出てくると思います。
再度、平成25年度設問Ⅲ-1に対して、私がまとめて回答案の骨子を示します。
この骨子の横軸が、「論理的な流れ」、縦軸が「多様な切り口・視点」となっています。
横軸の流れが論理的に展開されており、多面的な視点から解決策を提示していることを目指しています。
横軸と縦軸どちらも、合格論文には必要であることを理解していただけたらと思います。